一期一会。−2−
…なんて、何馬鹿なこと考えてるんだか。
僕が入りこめる隙なんて、きっとどこにもないのに。
愛と時雨は切っても切れない幼馴染。
2年もいれば、二人の関係の深さをよく理解できた。
僕は、愛が好きで翡翠高校を統べる時雨に手を貸している。
でも、僕が愛となれたのは、友達関系のみだった。
まぁ、それだけでも嬉しいんだけど。
それでも、たまに愛と時雨のやり取りを見ると、胸が痛くなるんだ。
見てわかる通り、一途に時雨のことが大好きな愛。
いつか彼女の直向きさが、自分に向けばいいのにと願ってしまう。
「見て見て時雨!
新作のリップ買ったの!
似合ってる?」
席が近いせいで、幼馴染二人の声が嫌でも聞こえてきてしまう。
必死の可愛さアピールにこっちが心臓をもぎ取られそうになる。
可愛すぎるだろ。
「どれどれ」
こんな時でも平静な時雨が心底憎たらしい。