一期一会。−2−
けど、わざわざライバルに近付かせるのも嫌だし。
オレは人からよく優しいと言われるけど、甘くはないからね。
窘められた彩羽はシューンとしつつも、諦めきれなかったのか真剣に和の顔を覗き込んでいた。
その数分後。
「…寝顔、可愛いのにな」
呟かれた言葉と共にが、彩羽の指先が和の頬へ伸ばされて。
ふに、と和の頬へと到達してしまった。
『あ、ちょっ、彩羽何してんの…!
起きちゃうじゃん…っ』
できる限りの小声で叫ぶ。
あー、もう、やらかしちゃって。
止めようにも、遅かった。
「ほっぺ、柔らか…」
危機感ゼロの彩羽はご満悦の顔を隠すことなく、和の頬を堪能する始末。
…うん、頭が痛いかな。
オレはもうそれ以上何も関与せずに、額を押さえた。
ふにふにふに、ガシィ。
「『あ』」
頬を突いていた彩羽の手が、一回り大きな和の手に掴まれていた。
フッと目を覚ました和は、固まる彩羽を認識する。
そして、不機嫌というよりは、不満そうに口元を歪めた。