一期一会。−2−



けど、わざわざライバルに近付かせるのも嫌だし。

オレは人からよく優しいと言われるけど、甘くはないからね。

窘められた彩羽はシューンとしつつも、諦めきれなかったのか真剣に和の顔を覗き込んでいた。


その数分後。


「…寝顔、可愛いのにな」


呟かれた言葉と共にが、彩羽の指先が和の頬へ伸ばされて。

ふに、と和の頬へと到達してしまった。


『あ、ちょっ、彩羽何してんの…!
 
 起きちゃうじゃん…っ』


できる限りの小声で叫ぶ。

あー、もう、やらかしちゃって。

止めようにも、遅かった。


「ほっぺ、柔らか…」


危機感ゼロの彩羽はご満悦の顔を隠すことなく、和の頬を堪能する始末。

…うん、頭が痛いかな。

オレはもうそれ以上何も関与せずに、額を押さえた。



ふにふにふに、ガシィ。



「『あ』」



頬を突いていた彩羽の手が、一回り大きな和の手に掴まれていた。

フッと目を覚ました和は、固まる彩羽を認識する。

そして、不機嫌というよりは、不満そうに口元を歪めた。





< 243 / 244 >

この作品をシェア

pagetop