一期一会。−2−
ー「大丈夫だよ、私がいる。

 これからは、もう、一人じゃないよ」


泣きそうに、笑って、俺のことを優しく
言葉で抱きしめてくるし。


ー「これから教えてよ、アンタのこと。

 私、何があっても離れないから」


闇堕ちして、極悪非道な組の若頭に
そんなことを言ってのける。

…何で、そんな漫画みたいなセリフを
すらすらと言えるのかがわからない。

…今まで、何も信じてはいけないと思っていた。

信じても、最後には、裏切られて絶望の底に突き落とされるのだと。

そう信じて、疑わなかった。

…疑うことでしか、生きていけなかった。

親友の頼人以外に、俺自身をまともに
見てくれる奴なんていなかった。

…それなのに、どうして今なんだよ。

ー…全部、諦めてしまいたかった。

この世界に、救いなんてないって、
思っていたのに。

呪って、恨んで、憎んで、それで
終わりだと思ってたのにさ。

都合よく、現れんなよ…ヒーロー。



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