一期一会。−2−
ー10分後。

ピーンポーンとチャイムが鳴る。

え、もう来たの?

ダルい身体を無理やり起こして、
ベッドから降りた。

…っ、やばい、フラつくんだけど…。

壁を伝いながら、玄関のドアを開ける。

そこには、写真通りの彩羽が
立っていた。

分かってても、驚いてしまう。

『…本当に来たの?』

口元を押さえて聞いたら、彩羽は
ちょっとびっくりしたように口を開いた。

「来ること、知ってたの?」

『いや…まぁ』

「そっか、じゃあ上がらせてもらうね」

あ、上がる…!?

石化する俺を無視して、彩羽は
袋を持って中へ入っていく。

「え、広。

 葵の家ってお金持ちなの?」

慣れた様子でリビングまで行ってしまうから、慌てて後を追う。

ちょっ、流石にそれは危ないって!

フラつきなんて最早二の次。

男の家に上がり込むなんて、やっちゃダメ
でしょうが!

『彩羽…、ここにいたら、風邪をうつし
 ちゃうから帰ったほうがいいよ』


< 65 / 244 >

この作品をシェア

pagetop