一期一会。−2−
ガサゴソと机の上に、袋の中身を置いていく彩羽を諭すが、聞く耳を持たない。

「いいよ、別に。

 弱ってるなら素直に甘えなよ。

 私には葵にお粥を作って看病する義務
 があるの」

まるで彼女みたいなセリフに、俺はそれ以上何も言えなかった。

彩羽…どんどん凛々しくなってない?

出逢った頃の面影が既に残ってない気がする。

これを、変化というのか、成長というのか。

だいぶ、複雑な心境。

「キッチン借りるね」と材料を抱えて、
台所にたつ彼女に、俺は説得を諦めて
大人しく椅子に座る。

彩羽は、手際よく食材を刻み、お粥を
作っていく。

…何だか、こうしていると家族にでも
なったみたいだ。

こんなこと、日常ではありえないのに。

風邪を引いて、むしろラッキーだと思った。

…にしても、彩羽って料理上手なんだな。

一人暮らしとは聞いていたけど、俺よりも
はるかに手さばきがいい。

トントントン、と包丁がリズミカルに
動く音が快く耳に響く。



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