一期一会。−2−
『料理、上手なんだね』

無意識の内に、口に出てしまっていた。

彩羽は、手を止めずにフラットな口調で
返してくる。

「まぁね、これでも6年くらい
 自炊してるから」

座っている俺からは、彩羽がどんな顔を
していたかまでは見えなかった。

けど、返された言葉に、ただ驚いていた。

…6年?

6年も、一人でいたのか…?

グツグツとお粥を煮込みながら、彩羽は
平然と言う。

「…私、小学生の頃、ソウ君に拾われる
 まで施設にいたの。

 家族に捨てられて一人だった私を
 救ってくれたソウ君には本当に
 感謝してる。

 まぁ、流石に一緒に住むのは申し訳
 なかったから別々にしてもらったん
 だけどね」

向こうには向こうの家庭があるから、と
穏やかに語られる彩羽の過去は、
想像を絶するほどに辛いものだった。

家族に捨てられて、一人…。

壮太さんが、本当に救いだったのだろう。

彩羽は、いつでも壮太さんを慕っている。

どうしてそんなに、彩羽が壮太さんを大事に思うかがわかった。

…ずっと、一人で辛さや寂しさを抱えて
生きてきたんだな。



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