一期一会。−2−
“王蝶”として、強い自分になっていったんだ。

想像するだけで、胸が苦しくなった。

こんな時でも、彩羽は強く在ろうとする
のか…。

辛くないはずが、ないのに。

完成したお粥を器に注いだ彩羽は、お盆に
木のスプーンを添えて置き、俺のテーブル
のところまで運んでくる。

コトリ、と俺の目の前に、それらを置いて
彩羽は少し悲しそうに微笑んだ。

「…そんな、悲しそうな顔しないでよ。

 私は、平気だよ」

嘘だ、そんなわけない。

平気だ、なんて言える人間は、大抵心の中で苦しんでいる。

俺は、…どうしたら彩羽の辛さや寂しさを
埋めてあげられるんだろう。

「冷めるから、食べて」

お粥より、自分の心配をしろよ…。

そう思いながらも、指示に従ってスプーンを
取ってお粥を掬った。

湯気を立てて、とても美味しそう。

一口食べてから、どうしてか、泣きたくなった。

『…おいしい』

彼女の作るお粥は、温かくて、美味しくて
一つも欠点がなかった。



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