一期一会。−2−
一人ぼっちなんかじゃ、なかったんだ。

ようやく、心の内の寂しさが、傷ついた想いが救われたような気がした。

…生きててよかった、って思えた。

…ありがとう、葵。

葵のおかげでやっと、あの日のまま、
置き去りにされた過去の私を抱きしめられるよ。

…“もう、一人じゃないよ”って。

葵を起こさないように、そっとベッドの
真ん中に移動させて、布団をかけてあげる。

そして、子供みたいな無防備な寝顔をジッと見つめて、静かに笑った。

『大好きだよ、葵』

聞こえないのもわかってて、それでも言いたかった。

寝落ちして、告白の返事も聞き逃したなんて知ったら、きっと残念がるだろうけど。

…私、とっても幸せだよ。

葵の“好き”が、私自身が誰かを好きになれたことが嬉しいんだよ。

…この気持ちは、ちゃんと伝えるね。




< 80 / 244 >

この作品をシェア

pagetop