一期一会。−2−
「楽しかったね」

『…うん』

あのフリルの服さえなければね…、と内心恨み言を呟く。

ニコニコ笑ってる時雨の目は、心から楽しそうに輝いていたため、文句を言わずに大人しく頷いた。

今は、何も余計なことは言うまい。

時雨の意地悪さはどうにかしてほしいけれど、頼りになる存在だと思う。

何だかんだ服のことも選んでもらったし、挙げ句に買ってもらって。

何か、時雨の彼女ってこんなに甘やかされちゃうんだ、と実感した。

大胆ではあるけど、はっきりした性格の
時雨といると、取り繕わなくて良いから落ち着く。

歩きながら、時雨は唐突に「クレープ食べたい」と言い出して、近くにあったスイーツショップに目をつけた。

甘い香りが鼻を通り抜けていく。

ん、シュガーバターの良い香り。

「クレープ2つください」

行動力が凄い時雨は、早速話しかけに行っていた。

女性の店員さんは、キラキラスマイルを浮かべる時雨に赤面していた。

まぁ、初見はそんな感じにもなるよね。

…って、2つ?


< 93 / 244 >

この作品をシェア

pagetop