一期一会。−2−
二人で椅子に座って、もくもくとクレープを頬張る。

ん~、うまい!

チョコレートとバナナのハーモニーが素晴らしすぎる。

うまうま、と食べ進める。

私より先に食べ終わった時雨は、微笑ましそうに此方を観察してくる。

いつも思うんだけど、食べてる時に見られると緊張するからやめてほしい。

ほっぺや口元につかないように、格闘しながら食べる。

「美味しかった?」

『ん』

最後の一口を食べきって、手を合わせる。

時雨は、私の顔を見て、「あ」と何かに気付いて、私の口元を拭う。

「ついてたよ、クリーム」

そして、クスッと悪戯っ子みたいに笑う。

え!気をつけてたのに…!

あわわ、とテンパる私に時雨は、「よくあることだよ」と慰めた。

『もうついてない?』

「うん」

心配で、尋ねたら時雨は目を細めて笑う。

あまり見たことのない大人びた笑みに、
不可抗力にもドキッとしてしまった。

時雨相手に、胸キュンしてしまうとは。


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