貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
ヒヤッと背筋を流れる。

柔らかい語りの裏にある,確かな冷たさ。

今日は不在のはずじゃ。

そう頭を回転させて,はっと気付く。

私は,繰り返してる?

動けてもいないし,何も変えられてない。

蘭華が早く帰宅したこの日この時間に,私はここに近寄った。

ここは,蘭華の地雷。

見つかってはいけなかった。



「聞いてる? ねぇ君,そこで何してるの?」



蘭華がもう一度問う。

感情の乗らない声に,私は恐怖を感じた。



「これは,お墓,でしょう」



前は不思議に思いながら触れていただけ。

そしてまだよく知らない,組織のトップに立つ男の怒りを感じて,ただ怯えた。

ずっと後で赦してくれたけど。

今は冷静に,落ち着いて,私はきっと話せる。

それを蘭華が許容するかは分からないけど。



「どうしてそう思うの?」

「幼い頃,こっそり飼ってた猫が逃げ出して,事故に遭ったの。そのお墓を,私はこんな風にして作ったから」

「それで?」

「お祈りを,していただけ。ここは…だれのお墓なの?」



踏み込んだ事を聞いている。

ずっとずっと内側に,踏み込んでいる。

怒る,かしら。
< 13 / 181 >

この作品をシェア

pagetop