貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
お母さんが生きていた頃,私が飼っていたのは白い猫だった。

おでこの辺りに,茶色く線みたいな模様の入った猫だった。

場所によってはぬかるむ,大雨の日に,その猫は逃げだして。

小さくはないその子は,それよりもずっと大きな馬に何度も引かれて,道に転がっていた。

その子のお墓を,私がたてた。

その時の悲しみは,今もずっと胸に残っている。

その悲しみの大きさを知りながら,それ以上だろう実の両親のことを私は蘭華に聞いていた。



「僕が8歳の時,両親はここを襲撃した人間に殺された。これはその墓だ」

 

蘭華が私に寄ってくる気配を感じて,しゃがんだ体勢のまま振り返る。



「火葬だけ任せて,2人の好きだった桜の木の根本に,僕が埋めた」



答えてくれるなんて,思わなかった。



「2人はこんな組織をまとめてるくせに,人間が大好きだったから,きっと喜ぶよ」



ここの人間も墓参りなんてもう殆どしないから。

蘭華は切なげに笑う。

蘭の花言葉は,「beauty(美)」や「refinement(優雅)」,そして「love(愛情)」と言う。

蘭華と名付けられた彼は,全くその通りの人間に育っていた。

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