貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
キラリと瞳の色が変わる。
まるで実験対象でも観察するように,カイは研究者のような目でじろじろとサムを眺め始めた。
サムは困惑しつつも,文句ひとつ口にしない。
「……ほんとに?」
やがて,カイは疑うような声をだす。
散々な態度に,サムも苦笑した。
「そのうち分かるわ。邪魔してごめんなさい。アンナに頼んでおくから,もう顔洗って食堂に行っていいわ」
「いや,飯はいいよ。俺夜食べすぎるから」
「そう,分かった。着いてきて,カイ。水道は私の部屋にもあるの」
とことこと無防備に着いてくるカイを,サムはチラリと振り返る。
屋敷のどのタイプの人間でもないカイに,興味を抱いたようだった。
サムは元々気性の優しい性格ゆえに,他者を受け入れやすい。
小動物のようなその反応に,私は密かに唇を綻ばせる。
「へー,前のとことは違うんだ」
「そうよ。前の部屋は,ほんとは蘭華の寝室なの。私を心配して,蘭華が屋敷内で多く過ごす部屋から近いあそこを譲ってくれていたの」
「……仲,いいんだな,リリー。意外……でもねぇけど」
天の邪鬼で気まぐれなカイはそっぽを向いた。
「凛々彩さんのことは,蘭華さんも大事にしています。多分初めての,ほんとの恋人だからだと思います。屋敷の皆も,今じゃ殆ど凛々彩さんと話すのを楽しみにしていますし」
そうなの? と,後ろから聞こえた補足につい私まで振り返る。