貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
ここを離れる前に,料理だけでなく洗濯などの手伝いを継続していたのも良かったかもしれない。

1番の理由はアンナが喜んでくれるからだけど,その時間は他の人とも会話をする機会が多くあったから。



「恋……人?」



ほんとは少し違う。

その複雑さを説明しきることは出来なくて,私は固まるカイに向き直った。



「そう言えば,リリー。なんでこんな危ないとこに? しかも蘭華なんて……その」



騙されてんじゃないの?

そう非難する視線に,私は苦笑した。

私や蘭華の立場を順に説明していく。

大事にはされているのだと,だから助けにも来てくれたんだと強調するのも忘れない。



「私が好きだから,いいの」



カイは瞳を揺らして顔を伏せた。

何かを察したようなサムも,気まずそうに目をそらす。



「大事にされてるうちは,いい。リリーが腹決めてるなら,今は黙ってる。でもそのうち,拐っていくから」



危なくなったら,と言うことなんだと。

私は微笑みながらお礼を伝え,来た道を曲がった。

私が友達だからと,蘭華からの扱いに腹を立てながらも,それは今すぐじゃない。

赤く燃えた真っ直ぐな瞳は,取り引きがあろうものならぶっ壊す。

そう言う優しさだと思った。

< 141 / 181 >

この作品をシェア

pagetop