貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!




部屋も近くなると,サムはカイへ歩みを見せる。



「あの,大丈夫ですか……? もしかしなくても……」

「うるさいな……もしかして,お前も?」

「……はい」



よくは聞こえない,潜めた男の子の会話。

私はそれを壊さないようにゆっくり歩いて,着いてしまっても静かに扉を開けた。



「さ,いらっしゃい! まぁ,蘭華に借りてる部屋なんだけどね。2人とも,座って」



サムのこと,カイのこと,近状の事。

順番に,私達は楽しく時間を過ごした。

夕方にもなると,少し疲れてきて,喉も乾く。



「何か飲み物を取ってくるわ。カイは何がいい?」



気分屋のカイにだけ尋ねると,カイは首を横に振った。



「いや,俺はいいよ,リリー。俺はもう戻ることにする,充分楽しかったからさ。また明日来てもいい?」

「もちろんよ」



私は微笑んで,素直な気持ちの乗った瞳で見返す。



「……サム」



呼ばれると思っていなかったサムは,気の抜けた顔でカイを見た。

カイがふと大人びた顔で笑う。



「カイ·バーナード。カイでいい」

「えっ……あ,はい」



それがどれだけ凄いことなのか,サムは理解していない。

私は思わず声をあげそうになった。



「サム,お前いいやつだな」



恥ずかしげもなく真っ直ぐに褒められて,逆にサムが恥じらうようにはにかんだ。

返事を待たず,カイは颯爽と扉を抜ける。

私が特別に何かしなくとも,気の合う2人の友情は再建されていた。

何もかも戻ったような気持ちで,私は嬉しくなる。



「じゃあ,私もいって……」

「あっ俺も行きます!!」

「うん。一緒に行こっか」



夕日が,希望の光のように見えた。
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