貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
「あなたは……何なの?」
不快な違和感に吐き気がする。
ああ,この感情は……恐ろしい,というものだ。
ダーレンとは比にならない。
『西の土地の主,夜雅ーよるがーだ』
夜雅は名乗ったあと,ばさりとキャップを脱いだ。
特徴とも言える,真っ赤な髪色。
「なぜそんな話を,わたしに……」
真と分かった訳じゃない。
でもこんなに作り込まれた話,全てが丸々嘘とは思えない。
つまり私が知っていい話ではないはずのものなのに。
答えはとても,シンプルだった。
「もうすぐ,死ぬからさ。美しい小娘」
彼がその美しく精悍な顔で笑うと同時,私の背後で耳を塞ぐほどの大きな音がした。
「ほうら,手製の大砲が,挨拶代わりの穴を門にあけた音だ」
バラバラとした音を聞いて,急いで振り替える。
私の後ろにあるのは,当然……
蘭華の,屋敷……
「俺の女になると言うなら,お前だけは生かしてやる。俺にしたら,どっちでもいい,がな。タイムリミットは……」
ー西の土地の主,蘭華の息の根が止まるまで
ふわりと軽く身体を使い,夜雅は駆け出す。
ふと,頬に何か触れた。
その正体に気が付いて,ぞわりと恐怖に襲われる。
……雪……!!!
思えば,夜雅が語り始めた頃から降っていた。
雪がキーポイントだと分かっていたのに,独特の空気を纏った彼に気を取られ,すぐに判断することが出来なかった。
つまり,つまり……!
前回蘭華を撃ち殺したのは,たった今彼を殺そうとしているのは……
やっぱり全部,夜雅の仕業……!!!
話が本当かどうかなんてどうでもいい。
私は転び擦りむきながら,夜雅の後を追った。
夜雅の走りは,あまりに速い。