貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
「お疲れ,サム。凛々彩,返して貰ってもいい?」



ふわりと抱きすくめられて,私は小さく声をあげる。

その一声だけで,広すぎる食堂全体の視線を占めた。



「ら,蘭華,私!」

「え? あの女今蘭華さんを呼び捨てた?」

「そんくらいたまにいるだろ。そうゆうやつほどすぐ追い出されたけどな」

「にしても可愛いなぁ」



あ……

トップの蘭華。

そうゆう人は沢山いる。

でも,正面から呼び捨てるなんて…!

そうそうない。

組織の人間が,そもそも許さない。

今の私には,積み上げた日々も許可もない。

なのに私は…

誰も指摘してくれなかった。

蘭華も,サムも。

そんなことあり得るの?

間違えた。

蘭華は本当に,さっさと追い出すつもりで黙認しているのかもしれない。

私がバカでいることに,何か都合の良さを感じているのかもしれない。

抱き締めたままの蘭華に,よしよしと頭を撫でられる。

反射で上を向くと,蘭華は楽しげに笑っていた。



「凛々彩,適当に並べといたよ。ご飯,一緒に食べよっか」



ざわりと大きな波紋が広がって,私は腰を抱かれている。
< 23 / 181 >

この作品をシェア

pagetop