貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
「ら,蘭華,私!」



見上げて声をあげると,蘭華は猫のように背を丸めて,より一層腰に回した手に力を込めた。



「ね,凛々彩。ちょっと静かにしてくれる? サムの恋人程度じゃ簡単に喰われるよ」



何…っでサム?

蘭華は耳元でふっと笑うと,わざわざ耳朶に唇を掠めてから離れていく。

カアッと頬が染まった。

そこまで,しなくてもいいでしょう!!?



「蘭華!」

「なに? 凛々彩」



何なの急に。

皆の前だからって,私もそれくらい分かってる。

でも…何度も名前を呼ばれたら,心臓が言うことを聞いてくれなくなるんだから。

ペチリと肩を叩く。

小さな抵抗。

その些細な動きにすら空気が揺れるのだから,ここはやっぱりおかしな場所。

驚いているおかしな蘭華をキッと睨んで,軽く涙目な私は言った。



「ご飯,冷めちゃう」

「こちらですよ,お嬢様」



蘭華は吹き出すように笑って,私の手首を持ち上げるとその甲に自分の唇を当てる。

そして,ゆるりと引いて歩いた。
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