貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
『蘭華さん,お食事中失礼します!』
サムの大きな声がして,余程急ぎの要件なのか,サムは蘭華の返事も待たず襖を開けた。
タイミングとしては最悪で,私が制止しようとするも間に合わなかった。
蘭華だけが何の反応もなく声の方を冷静に見ている。
「凛々彩さんもすみませ……蘭華さん?! 何してるんですか!!!」
サム,落ち着いて。
理由より先に,いいえ,例え理由を知った後だとしても蘭華に食って掛かるなんて,自殺行為でしかないでしょう。
サムは片手を取り上げられた私の姿を見るなり,とても大きな声をあげて。
あろうことか,咎めるように蘭華の身体にしがみついた。
「サム,退いて」
「嫌です! 理由は知りませんけど,凛々彩さんがここの人間を裏切るような事をするとは思えません。と言うことは今の状況は,不当なものだと思います!!」
「サム,お前の意見は聞いてない。退け」
蘭華が込めた力に,私がこらえられず小さく声を漏らすと。
サムは惑い,ゆっくり蘭華を離した。
代わりに私を守るように横から抱き締める。
サム……どうしてそこまで。
サムはいい子だから,仲良くなれた私を見捨てられなかったんだろう。
蘭華の判断より,理由も知らず私を信じてくれた。
でも,だめ。
ここの決定権は全て蘭華にあるんだって,知ってるはずでしょう?
「蘭華……さっきの,質問だけど」
私が口を開けば,意識の向いた蘭華の拘束が,少し緩んだ。
じんじんと痛みを感じる。
ごめんね,蘭華。
嘘をつけないなら,私は
「私には……答えられないわ。だって蘭華はきっと,話したって信じてくれないもの」
こんな話,信じられるわけがない。
それも,まだ出逢って直ぐで,信頼関係なんてほとんど無いのに。
もどかしい。
話してしまえないのが,初めての愛してるを口に出来ないのが。
「監視をつけても,軟禁しても,食事を1日1食にしても構わないわ。だけど,私が蘭華を含めた皆の事を害そうとすることは誓ってない。それだけ……信じて,蘭華」