貴方の涙を拾うため,人生巻き戻って来ました!
「凛々彩」
「?」
「これ以上,僕を惑わすようなことしないで。君を信じてあげたいけど,出来ないようになるかもしれない」
変なこと,言うのね。
信じたい。
そう言って貰えるのが,どんなに嬉しいか。
こんな状況でも喜んでしまう自分がいる。
蘭華は私に背を向けて,ボックスから氷を,タンスから塗り薬と袋を取り出した。
身動き1つせず待っていると,ほんとに蘭華が全てをしてくれる。
「蘭華……話せることがなくてごめんなさい」
自ら蒸し返すなんてばかだと分かってる。
だけど,蘭華にとって大事な歌だったなら。
今だって気が気じゃないはず。
私の後ろに,誰かがいるんじゃないかと邪推して。
不安で仕方ないはずなのに,こんな風に放し飼いにされるなんて思ってもいなかった。
……両親が,一夜にして暗殺されたなら……なおさらのこと……
「信じて貰えないと言ったよね,凛々彩。もし君が本当に僕達に害をなさないなら,裏切らないなら。……僕はいつか,全部聞き出す気でいるよ」
「そう……」
私が偽りなく全てを口にする日。
そんなのが来るとしたらそれは。
あの地獄を見た日以外には無いのだと思う。
もしその時,蘭華が私を大事に思ってくれていたなら。
全て演技だったのかと失望や怒り·悲しみを見ることになる。
それでも,それまで蘭華が私を待ってくれるなら。
猶予をくれるなら
「私も,いつか話すと約束するわ」
蘭華と離れる,その前に。
「それを聞かなくても……今日みたいに僕が君を屠る決断をすることも簡単なんだってこと,忘れないでね」
「ええ,忘れない」
簡単なんかじゃないでしょう。
いつも蘭華が冷静に努めようとしているのは,無駄に命を散らさないためでしょう。
私を詰めたのも,私の言葉を聞こうとしたからでしょう。
「絶対に忘れないで」
2回も忠告をくれる程,蘭華は私を殺したくはないと思ってる。
私が自分の行動に気を付けることは,私の命を守ることに繋がるから。
私はもう,間違えない。
あの頃と変わらない蘭華。
あの頃と全く違う関係性。
ちゃんと私は,理解したから。
幻想を追うことは,もうしない。
ちゃんと蘭華と向き合って,今を生きて。
そして……蘭華の未来を,守るんだ。