君の花嫁 ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~
モヤモヤした気持ちを抱えながらも、放課後は文化祭の準備で忙しい。
伊織とは昼間の化学の授業の後から話をしていなかった。
タイミングの問題でもあるけど、なんか少し気まずいんだよね。
「じゃぁ、あっちのポスター貼りよろしくね」
「了解」
友達と手分けして、クラスの宣伝ポスターを貼りに行く。
手頃な所に貼って回っていると、「綾川先輩」と声をかけられた。
振り返ると、そこには日葵ちゃんがニコニコと立っていた。
うわぁ……、今一番会いたくない人。
そうは思っても顔には出さずに笑顔を作る。
「何かな?」
「綾川先輩って、伊織先輩とどんな関係なんですか?」
「どんな!? えっと~……」
夫婦なんだけど……。本当の事は言えない。
「一応、付き合ってる……かな」
一般的にはそういうことになるよね。
すると、日葵ちゃんは「ふぅん」と考えるように指を口元に持っていった。
「伊織先輩もそう言ってました」
「そう……」
「でも私、伊織先輩が好きなんですよね。どうしましょう」
「えっ」
好き!?
どうしましょう、なんて言われても困る!
「えっと……、そんなことを言われても……」
「ですよね。綾川先輩は別れる気ありませんもんね?」
「ないよ!」
笑顔でサラッと怖いことを言うな。
「じゃぁ、無理に別れろなんて言いません。でも、私諦めませんから」
「っ……」
まさかの堂々とライバル宣言か。
私は表情を固くして日葵ちゃんを見る。
「もし伊織先輩が私の方を選んでくれたら……、それは仕方ないですよね?」
「……伊織はそんな簡単な人ではないよ」
「そんなのわからないじゃないですか~」
私の言葉に可笑しそうにケラケラと笑う。
「伊織先輩が私を選んでも、そこは恨みっこなしでお願いします。伊織先輩が決めたことですから」
笑いながら軽く手を合わせてお願いポーズをし、「では」と日葵ちゃんは去っていった。
「なにあれ……」
唖然として言葉がでない。
あんなのライバル宣言でもあり、勝利宣言でもある。
日葵ちゃんは、伊織が絶対自分を好きになると思っているんだ。
自分が本気をだせば、伊織を落とせると。
「伊織はそんな人じゃない」
好きだと言ってくれた。
なにより、私たちは夫婦だ。
恋人同士よりも絆は深いはず。
そうだよね? 伊織……。
そう思いながらも、モヤモヤした気持ちは収まらないでいた。