君の花嫁 ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~
前日準備は遅くまでかかり、家に帰ったころには莉奈ちゃんは寝てしまっていた。
「今日は社長が早くにお帰りになったので、一緒に食事とお風呂を済ませて眠られましたよ」
私たちのお世話係でもある風間さんはニッコリ微笑みながらそう言った。
夕飯はお手伝いさんがたくさん作っておいてくれたようだ。
「ありがとうございます。着替えたら夕飯出しますね。風間さんも食べて行くでしょう?」
「いいんですか? じゃぁ、お言葉に甘えて」
風間さんはスーツの上着を脱いでネクタイも緩めた。
こうして時々、遅くなると風間さんが夕飯を食べて行くことがある。
急いで部屋着に着替えて、ご飯を温めた。今日はカレーだ。
「明日の文化祭、楽しみですね。外部の人間が入れないのが残念です」
うちの文化祭はいわゆるお金持ち学校で子息、令嬢も多いため防犯や安全確保の面から外部公開はしていないのだ。
「本当、一般公開していたら風間さんや莉奈ちゃん達に来てもらいたかったです」
「いゃぁ、本当に。私も見たかったな、伊織様のハー……」
「げほんげほん!!!!」
風間さんが言いかけて、伊織が大きく咳き込んだ。
そして慌てたように制止をかける。
「風間さん!」
「あ~……、ミスコンをね。ミスコンを見たかったです」
風間さんは苦笑いをしてカレーを食べる。
何か言いかけていたけど、聞き取れなかった。
「楽しい思い出になるといいですね」
「そう……ですね」
楽しい思い出、と言われて日葵ちゃんの言葉を思い出す。
伊織に告白するなんて言われて、明日楽しく過ごせるのかな……。
その時、伊織のスマホが鳴って席を外した。伊織が部屋から出て行くのを見届けてから、風間さんが口を開いた。
「何かあったんですか?」
「え?」
「浮かない顔してますよ」
そう言われて、パッと頬を触る。
その仕草に風間さんが苦笑した。
「わかりますか?」
「まぁ、文化祭前の心浮かれた感じではないなとは思いますよ。伊織様のことですか?」
「まぁ……」
「私で良ければ話を聞きますが?」
風間さんに優しくそう言われて、心が緩む。
大人の包容力ってこういうことだろうな。
「実は……」
私は日葵ちゃんのことを風間さんに話した。
風間さんは頷きながら静かに聞いていてくれる。
「なるほど……。今時の女子高生は積極的ですね」
「感心している場合じゃないんです」