君の花嫁 ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~
超絶美女がいる! と噂が噂を呼び、うちのクラスは終始満員御礼状態だった。
伊織はハートの女王の姿で椅子に座っていればいいと言われていたようで、基本は前に設置された椅子から動かない。
その姿はまるで本物の女王のよう。
お茶会をする下々を足を組んで高みの見物をしているようだ。
「女装でここまで綺麗になる?」
半ば唖然とした気持ちで呟く。
「雨宮は元の顔立ちが綺麗だからね。ゴツくないし。まぁ、強いて言うならデカイってとこかな」
確かに伊織は背が高い。でも逆にそれが女王らしさがかもし出されており、威圧感を与えてプラスになっている気がする。
「俺、雨宮先輩ならアリかも……」
「うん、その気持ちわかる……」
近くの席に座っていた男の子達がゴクリと唾を飲み込みながら話しているのが聞こえた。
「わぁ、凄い! めちゃくちゃ綺麗ですね」
そう言いながら入ってきたのは日葵ちゃんだった。
あ、やっぱり。来ると思ってたよ。
「あ、綾川先輩も素敵ですね」
「ありがと」
取って付けたかのような言い方だったが、一応お礼は言っておく。
「伊織先輩ー」
日葵ちゃんが手を振ると伊織も軽く手を上げて応える。
「あ、やっぱり髪はアップにしたんですね。その方が似合っています」
日葵ちゃんは言いながら伊織の近くの席に通されて行った。ふたりは軽く談笑しているのが見える。
やっぱりアップにってどういうこと? このかつらは日葵ちゃんのアドバイスなの?
チラッと薫を見ると、少し気まずそうに頬をかいた。
「雨宮の髪型、ロングで下すかアップにするか意見が分かれてたところにあの子が来てさ。伊織先輩は顔立ちが綺麗だから絶対アップにするべきですって熱弁したのよ」
「……へぇ。日葵ちゃん、伊織の衣装のこと知ってたんだ……」
「あ、いや、あの子が来たのもたまたまなんだけどね!?」
薫が弁明するように手を振る。
分かっている。でも、私だけがなにも聞かされてなかったんだという疎外感を感じる。
「アリス、これ運んで~」
「はぁい、今行く」
私は楽しそうに話す伊織と日葵ちゃんが視界に入らないように仕事に専念した。