君の花嫁 ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~
「いくらニアミスとはいえ、普通、自分に告白してきて振った子をモデルに使うかね」
「モデルのことは他の社員に任せていたらしいの。だから伊織は文化祭のときに、日葵ちゃんに聞いて初めて知ったみたい」
「とはいえさ」
「仕方ないんだよね……」
薫はチラッと私を見て、おでこを軽く突っついた。
「今日はそんな割り切りいらないの」
「え?」
「本音は? 真琴の本音をぶちかましていいんだよ。ここには雨宮もいないんだから」
薫……。
私の本音は……。
「……凄く嫌だ」
「うん」
「日葵ちゃんと仕事してほしくない。伊織の会社のモデルなんてしてほしくない」
「うん」
「伊織は仕事だって割り切るだろうけど、日葵ちゃんはそんな感じじゃなくて! 接点持って隙あらばって感じがするから、嫌だなって思っちゃって……」
気がつけば、ポロッと涙がこぼれた。
「仕事のことだし、風間さんからも言われたら黙って納得するしかないじゃん!? でもさ、普通に考えたら有り得ないだろう!って思って。なんか伊織ともギクシャクしちゃうし……」
拭っても拭っても、ポロポロと止まらない。
「ごめん、なんか私……」
「いいよ」
泣きながらも、愚痴は止まらない。
伊織の仕事のことには口は出せない。だから、伊織には絶対に言えないことばかり。
そんな話を薫は頷きながら、時に共感しながら聞いていてくれた。
支離滅裂になりながらも、一通り思っていたことをワーッと話終えると、なんだか心が少しだけ軽くなった。
私の表情を見て、薫が笑った。
「お風呂、入ってきなよ。サッパリするよ」
「うん。じゃぁ、先に入るね」
薫のパジャマとタオルを借りて、お風呂に入る。
お風呂から出ると、なんか心もスッキリしていた。
私が出たあと、薫もお風呂に入った。出てくると、手には冷やしておいた飲み物を持っていた。
「さぁ! 夜はまだまだこれからよ。お菓子食べて、ジュース飲んで女子トークやゲームして楽しもう」
「うん!」
私達はジュースを片手に乾杯をした。