君の花嫁 ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~
布団からゆっくり体を起こす。
「……ショックだった」
俯きながら、ボソッと呟く。
「仕事だから仕方ないってわかっているし、私の我が儘だってわかっているから何も言えずに黙っていたけど……。気持ちの部分では悲しくて、悔しくて凄く嫌だった」
「うん、ごめん」
「写真だって……。試し撮りだって言うなら、どうしてこうやって新聞になるの!? ウエディング写真……、私だってまだ伊織と撮っていないのに……」
最後の方は声が小さくなってしまった。
子どものような嫉妬で恥ずかしい。でもこんな写真を見せられて、なにも思わずにいるなんて出来ないよ。
「代役だし、一枚だけだからいいと思ったんだ。でもこんなことになって、真琴を傷つけたのは俺の責任だ。本当に悪かったと思っている」
「だったら……!」
言いかけてハッとした。
”日葵ちゃんを起用するのは止めて‘‘
そう、言葉が出そうになった。
でも、本来なら私が口出すべきことではない。
これは伊織の仕事のことなんだ。伊織は仕事をしているだけ。
それを私が勝手に傷ついているだけなんだよね……。
「……ううん。私こそ、仕事でしたことだってわかってたのに……、ごめん……」
「真琴が謝ることじゃない。たぶん、出所は川口だろう。もうこういったことはしないよう注意しておくから」
「ありがとう」
やっぱり、日葵ちゃんか。
日葵ちゃんがこの写真を新聞部に渡したんだろう。
確実に私への当てで……。
そこまでライバル視されているなんて思わなかった。
彼女だと公言しているのに、自分の方が私より上だと思っているのだろう。
マウンティングされてちるんだ。
だから、強気になってこういうことしているのかもしれなかった。
伊織を好きだからこそ、どうしても仲を裂きたいのかな。
私はこっそりため息をついた。
日葵ちゃんのことを考えると、気が重くなった。
「帰れるか?」
「うん。あ、荷物持ってくれてありがとう」
伊織は片手に私の荷物を持って、もう片手を差し出してくる。
その手をそっと取ると、ギュッと握り返してくれる。
大きくて温かい優しい手。
すっぽりと私を包み込んで、それがとても安心するのだ。
この手はずっとこうして握っていてほしい。
私だけを掴まえていてほしかった。