君の花嫁 ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~
伊織に連れられて、中庭のベンチに座る。
日差しがポカポカで心地いい。
さっきの一件で、食堂ではみんなが聞き耳を立てて注目していたから、ここにきてなんだかホッとした。
「真琴、はい」
伊織がジュースを買ってきて手渡してくれる。
「ありがとう。いただきます」
一口飲んで、はぁと息を吐いた。
「大丈夫か?」
「うん、びっくりしたけどね」
人にあそこまで敵意剥き出しにされたことなんてないから、正直怖かったけど。
「彼女は自分に自信があって、プライドも高い。結構しんどい気持ちにさせたなって思った。色々とごめん」
「ううん。伊織の言うこともわかっていたし、伊織のせいじゃないから」
首を横に振るが、伊織はそっと肩を抱き寄せた。
「いや、真琴の気持ちがちゃんとわかっていなかった。真琴が倒れるまで、不安にさせて傷つけていたことに気が付かなかった。真琴だって、まだドレス着て俺と写真を撮っていないのに、他の……しかも、自分をライバル視しているような女の子と撮られたらショックだよな」
「……うん。ショックだった……」
思わず、ポロッと涙が零れて慌てて拭う。
「気持ちでつながっているなんて思っていたけど、行動で不安にさせてしまっていた。本当、ごめん」
「伊織が謝ることじゃない。仕事は仕事、プライベートはプライベートってちゃんと分けたかった気持ちもよくわかるよ」
「真琴……」
伊織は私にの身体を離し、頬の涙を拭った。
そして、その涙跡にそっとキスをする。
「い、伊織っ。ここ学校……」
真っ赤になってそう言うと、伊織はふふっと笑った。
「ごめん、つい……」
「ついって……」
「キス、されたくない?」
そんなこと聞かれたら、嫌だとは言いにくい。
好きな人にはいつだって、キスされたいと思っている。
赤くなったまま俯いて答えない私に、伊織は小さく笑って、再び頬に軽くキスをした。