君の花嫁 ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~
あの一件から、日葵ちゃんはとても大人しくなった。
伊織が日葵ちゃんを怒ったという話しはあっという間に広がって、日葵ちゃんは気まずい思いをしているようだ。
学校内で私に会っても、目線すらよこさず完全に無視をして、少しの接点をもなくそうとしていた。
でもそれでいいのだと思う。
そして、騒動から1週間後。
やっと落ち着きを取り戻したな、とホッとしたためか、私は熱をだした。
「ありがとうございました」
玄関で伊織が訪問医師に挨拶をする声が聞こえた。
朝から身体がダルいと思い、熱を測ったら38℃。
風間さんが医師を呼んでくれて、診察が終わったところだった。
診断は風邪。症状は熱しかないから、疲れから来ているところもあるのかもと言われた。
「思っていた以上に、精神的に疲れたもんなぁ……」
私はベッドに横になりながら、ため息をつく。
すると、部屋の扉がノックされて返事をすると伊織が入ってきた。
「おかゆ持ってきたけど、少しは食べられそうか?」
お盆にのせられたのは温かそうなおかゆだった。
「莉奈がお手伝いさんと一緒に作ったらしい」
「本当!? 嬉しい」
あの小さな手で一生懸命に作ってくれたのかなと思うと、嬉しくて仕方なかった。
身体を起こそうとすると、伊織が支えてくれた。
「食欲ないかもだけど、薬飲まなきゃ行けないから少しでいいから食べて」
「ありがとう」
一口口に入れると、ほどよい塩気と柔らかさに頬が緩む。
「美味しい。莉奈ちゃんにありがとうって伝えて」
熱があるので、部屋には入れてあげられないから直接お礼が言えない。
伊織は頷いて、スプーンにお粥を少し乗せた。
「はい、あーん」
「えっ」
突然の行動に目を丸くして、顔が赤くなる。
伊織はニコニコと笑顔で私が口を開けるのを待っていた。
これは、食べるまで待っているだろうな。
恥ずかしくてドキドキするが、ゆっくり口をかけると伊織がお粥を食べさせてくれた。
「美味しい?」
「うん」
頷くと、ふふふと伊織が笑った。
「なに?」
「いや、なんか餌付けしている気分になるなって」
「なにそれー」
思わず、頬を膨らますが楽しそうな伊織に怒れないでいた。
「悪かった。ほら、薬飲んだらもう少し横になっていて。俺、この後少し出かけるから」
「どこにいくの? 仕事?」
今日は休日だ。
出かけるとしたら、大体は仕事だろうと予測はついた。
「うん。ちょっと準備があって」
「準備?」
「あ、いや。仕事のね。じゃぁいってきます」
伊織は私の頭を撫でて部屋から出て行った。