君の花嫁    ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~


体調が完全に戻るまで、一週間ほどかかった。
でも熱とともになにかが身体から抜け出たのか、今までにないくらいにスッキリとした気分だった。

「真琴、明日の土曜日。予定空けといてくれないか」

夕食後、ふたりでソファーに座ってコーヒーを飲んでいると伊織が微笑みながらそう言った。

「明日? 急だね。いいけど、なんで?」
「明日教える」

もったいぶった言い方に首を傾げるが、伊織は教えてくれなかった。
まぁ、いいか。明日になればわかるだろう。
そう思い、お風呂に入って早々に布団に入った。

――――

翌日。
朝食が終わると、風間さんが笑顔で迎えに来た。

「おはようございます、真琴様」
「風間さん、おはようございます。今日は早くからどうしたんですか?」

キョトンとする私に、伊織は軽く背中を押す。

「今から風間さんと支度をしてきて。俺は待っているから」
「支度? 待っている?」

何のことかわからず、頭の中は?マークだらけだ。
昨日言っていた、空けといてとは朝から風間さんと行動することだったんだろうか。
てっきりデートか何かかと思って気合入れたんだけどな。
訳が分からないまま、伊織に見送られ、風間さんに車で連れ出される。

「どこ行くんですか?」
「ついて来て下されば分かりますよ」

風間さんは機嫌よく答える。
車で連れて行かれたのは、高級店が立ち並ぶビルの一角だった。
お店に入るとアロマのようなとてもいい香りがしてホッとする。

「いらっしゃませ」

中から若い女性の店員さんが出て来て、「お待ちしておりました」と私に声をかけた。
風間さんを振り返ると、ニッコリ微笑まれた。

「私はこのロビーで待っています。何かありましたらお声がけ下さい」

そう言って、オシャレなロビーのソファーに座り、私に手を振った。

「雨宮様、こちらへどうぞ」
「あ、はい」

本名の雨宮で呼ばれてドキッとする。
普段呼ばれることはないからドキドキと胸が高鳴った。
店員さんの後に着いて廊下を歩いて行くと、奥の個室に通された。
そこはとても広い、お風呂とベッド、そして心地いいアロマの香りがする。
これってもしかして……。

「マッサージ……、エステとかですか?」

真琴が聞くと店員さんは優しく頷いて、タオルと紙の下着を渡されて着替えをするよう促された。
でも、どうしてエステなんて? 
そう聞こうとしたが、着替えのために店員さんは部屋から出て行ってしまい誰も居なくなってしまった。

「どういうこと?」

私は思わずお腹の肉をぷにぷにと触る。
風邪を引いたから太りすぎているということはないし、エステが必要なほどカサカサなつもりもないけど……。
そうこうしているうちに、さっきの店員さんが戻って来てベッドに横になるよう言われ、アロマを付けてマッサージが始まった。
アロマの香りが心地よく、力加減も良くてとっても気持ちがいい。
思わずウトウトし始めてしまった。

「本当は数回通っていただくのが良いんですけどね」

店員さんの穏やかな声に、半覚醒状態で答える。

「数回? なぜですか?」
「ブライダルエステは回数を分けることが多いんですよ」
「あ、そうなんですね~」

そう納得して、「ん?」と目が覚めた。

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