君の花嫁    ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~


風間さんが連れて行ってくれたのは、伊織の会社に隣接するスタジオだった。
ドキドキしながら中に入ると、係りの人に通される。

「ドレス、この中からお選びください」

そう言われて、ラックにかけられている数点のウエディングドレスを見あげる。
どれも伊織の会社のドレスだ。

「うわぁ、綺麗……」

ひとつひとつ見て回るが、どれも素敵な物ばかりで決めきれない。

「どれも似合うと思うよ」

そう声がかかって、後ろを振り向くと、伊織が立っていた。
まだ、私服のままだ。

「伊織。聞いたよ、写真撮影の事。言ってくれたらいいのに」
「ごめん、驚かせたかったんだ。真琴が寝込んでいる時に準備したから、少し時間がなくて……。色々と詰め込み過ぎて疲れた?」

そうか、熱を出したときに色々と手配をしてくれていたんだ。

「ううん、逆にマッサージで疲れが取れている。あそこのお店、凄いね」
「あそこは特別店だからな」

そう話しながらも、目はドレスから離せない。
その中でも一点、目につくものがあった。

「これ、綺麗……」

プリンセスラインで、胸元にキラキラと綺麗な装飾がされている。
ドレス自体、光沢があり可愛らしさと上品さを兼ね備えていた。

「お客様、お目が高い。こちら、先日でたばかりの新作になります」

そうおどけつつも、ドレスを出してくれる。

「着てみなよ。ついでにメイクもして準備して来て」

そう促されて、部屋に入る。
ドレスを試着すると、サイズもぴったり合っており驚いた。
もしかして、事前に私様に直しを入れていてくれたのかな……。
真相はわからないがそう思うくらい、よく合っていた。

係りの人と相談しながら小物やメイク、髪型までそろえる。
一時間後、出来上がったときには完全に花嫁になっていた。

「とってもお綺麗です」

メイクさんも満足げにスタジオに連れて行ってくれる。
すると、そこには髪を上げて白いタキシードを着た伊織が待っていた。

「わぁ……」

スラッとしたタキシード姿の伊織が格好良すぎて、それ以上の声が出ない。
自分の顔が赤くなるのを感じた。
この人の隣に立つなんてハードルが高すぎる。
思わず足が止まると、伊織がこちらへやってきた。

「凄く綺麗だ」

囁くようなその声は、熱を含んでおり伊織が本心で言ってくれたのがわかる。
そっと私の手を引いて、スタジオの中央まで連れていってくれた。




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