君の花嫁 ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~
被服室へ行くと、左右がパーテーションで仕切られており男女が分かれていた。
「あ、真琴。こっちこっち」
薫が手招きする方へ行くと、「これ着てみて」と衣装を渡される。
薫が指した所に試着室が作られていた。
「採寸するんじゃないの?」
「真琴の体型はおおよそ分かっているから、手直しするだけで大丈夫なはずなの。あ、小物はこれね」
早口で告げられて試着室に押し込まれる。
体型、おおよそわかってるの?
薫の発言に驚きつつ、渡された衣装の袖を通す。
「おおっ」
着てみて感嘆の声が出た。
「薫、これ本当に作ったの?」
「凄いでしょ。結構工夫したんだから」
アリスの水色のワンピースに白いエプロン。カチューシャに靴下、靴。本当に絵本やアニメのアリスの服に忠実に作られており、安っぽさがない。
生徒会から各クラスに予算が渡されて、その予算内で出し物や衣装などを作ることになっているが、その予算内でこのクオリティは凄い。
カーテンを開けて出ると、「おおー、似合うね」とみんな口々に言ってくれた。
「やっぱり私の思った通りだ。袖を少し直せば良さそうだね」
「ピッタリだよ。薫、凄い」
私に絶賛されて薫もドヤ顔をして笑う。
すると、隣のパーテーションの先から黄色い悲鳴が聞こえた。
「あ、伊織も衣装合わせしたみたいよ」
隣の部屋を覗くと、女子がキャーキャー騒いでいる。
その尋常じゃない騒ぎ方に驚く。
「雨宮は衣装の作りがいがあるな」
「ここまで似合うと、ある意味気持ちいいな」
「俺、命令されたい」
と衣装班の男子も満足気だ。
どれどれ~と試着室の方を見るとシャッと勢いよくカーテンが閉められた。
「真琴は見なくていいから!」
中から焦ったような伊織の声がする。
「え~、見たい」
カーテンを開けようとするが、ピッチリ閉められて見えなかった。
「ほんと、無理。駄目」
「なによ、ケチ~」
頑なな伊織にムッとする。
見せてくれたっていいのに。
「まぁまぁ。大丈夫よ、どうせ当日見るんだから。ねぇ、雨宮」
薫はふふふと不適な笑みで、カーテンの中にいる伊織にそう呟いた。