君の花嫁    ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~


結局、伊織の衣装が何かはクラスの誰も教えてくれなかった。
当日わかることであっても、何を着るかは気になるじゃない。
女子はアリスだけど、男子はウサギやマッドハッタ―など選択肢があるって聞いたし。
夕食後、伊織の部屋で課題をやりつつ、さりげなく衣装について探りを入れたが気まずそうにかわされてしまった。

「たいしたことないから」
「ちょっとだけでもヒントちょうだい?」
「可愛くおねだりしてもダメ」

軽くおでこを突かれてしまう。
ちぇっ、ケチ。
頬を膨らませ、仕方ないかと諦める。

「でもさ、薫が言ってたよ。伊織はミスコンにしても衣装にしても、嫌がりつつ周りの空気を呼んで引き受けてくれるから本当に助かるって」
「都合よく使われているだけだって。人の気も知らないで」

苦笑しながら、課題を仕上げて参考書を閉じた。

「伊織は大変かもね。でも他の子の仕事が楽になるとか喜ぶとか期待を裏切りたくないとか……、そういう思いで伊織は引き受けるんでしょ?」
「……分析が凄いね」

頬杖を突きながら、呆れたように私の課題をトントンと指を指す。
そんな事より、早くやりなってことだろう。
もう、最後まで聞いてよ。

「つまり、私が言いたいのは伊織は優しいってことなの!」
「っ……」

私が言い切って課題に移ろうとすると、伊織が驚いたような表情から一気に照れたような顔になった。
あ、珍しい表情。
滅多に見れない顔に、わぁっと嬉しくなって覗き込む。

「見るな」
「見る」
「じゃぁ、見えないようにするから」

そう言うと、熱いキスで顔を隠す。

「んっ……」

思わず声が漏れると、伊織は唇を離してきつく抱きしめてきた。
私も伊織も胸がドキドキしている。

「伊織……、苦しいよ」
「真琴が……、変なこと言うからだろ」

そう言って私の左耳をカプッと軽く甘噛みをした。

「ひゃっ」

背中にゾクゾクと甘い痺れが走る。
変なことなんて言っていないのに。本当に、伊織は優しいから……。
結局、相手の気持ちを優先するんだよ。







< 7 / 43 >

この作品をシェア

pagetop