君の花嫁 ~シリーズ番外編 恋のライバルに宣戦布告されました!?~
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文化祭まであと三日。
学校内は次々と設営がはじまり、みんな気持ちが浮足だっていた。
一般公開はされず、家族も呼べないのが残念だけど(お金持ち学校なので親のしがらみ等別の問題が起きやすいための配慮らしい)それでも盛り上がっており、力も入っていた。
それは、伊織が出るミスコンも同様だった。
「雨宮先輩、応援しています」
「ありがとう」
移動教室で、そう声をかけられた伊織はやや引きつった顔で笑顔を返した。
「きゃー」と女の子たちは小走りで去っていく。
今日、これで何度目?
少し前を友達たちと歩く伊織を眺めつつ、こっそりため息をつく。
「不満そう~」
横から薫がニヤニヤしながら言ってきた。
「べ、別に不満何なんて……」
ない……、とは言い切れないけど……。
「初めは余裕そうだったじゃん。優勝できるといいね~くらいにさ」
「そうだよ。そう思ってるよ」
「でも今では女の子に声をかけられているのを見て、口が尖ってますよ」
指摘されて、パッと口を押える。
「可愛い、真琴。旦那がモテるのも大変だね」
「ちょっと、シー」
私をぐりぐりと愛でる薫に慌ててストップをかける。
「大丈夫よ、誰もいないから。でも、ただでさえあのルックスだから目立つのにミスコンでさらに注目されるだろうね」
「……外部の人いないし。校内の人だけだし」
「うんうん」
また自然と口が尖ってしまう私を薫が優しく撫でる。
もう、面白がってるんだか優しいんだか。
角を曲がったところで足が止まった。
伊織が女の子に声をかけられていたのだ。
あの子は……。
「あの子、候補者の川口……なんだっけ」
「川口日葵ちゃん……」
「そうそう。……なんか親し気に話しかけているね」
薫が眉を潜める。
確かにニコニコしながら伊織の腕に触れていた。
薫と角からこっそりのぞく。
「なに話しているんだろ」
薫が声を潜めて話しかけてくるが、私は答えられずにいた。
普通に通り過ぎればいいのに、近くに寄れない。
日葵ちゃんの親し気な様子と、キラキラした笑顔が他の子たちと違う胸のざわつきを感じさせる。
こちらに背を向けていた伊織が横を向く。ニコニコと楽しそうな笑顔を日葵ちゃんに向けていた。
他の女の子達に見せていたようなあんな愛想笑いではなく、普段の伊織だ。
「え……」
「ずいぶんと楽しそうね、雨宮」
「日葵ちゃんと知り合いなのかな?」
私の呟きに、薫は「さぁ?」と首をひねる。
日葵ちゃんは笑顔で伊織に頭を下げると、こちらに向かって歩いてきた。
そして角を曲がり、私に気が付くとニコッと笑顔を向けて通り過ぎて行った。
「なに……、あの笑顔……」
私の気持ちを代弁するように薫が唖然と呟く。
日葵ちゃんの笑顔は、伊織に向けた様なものではなく、どこか勝ち誇ったかのようなそんな笑顔だった。