干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「このテグスを巻くとこまで、終わらせちゃいますね」

 美琴の言葉に、副社長はほほ笑みながら無言で頷いた。


 しばらく集中して作業を進める。

 人のいなくなった温室は、ジーッという空調の音だけが響いている。

 美琴はふと、副社長と二人きりの静かな空間にそわそわとしだして、作業の手を止めた。


「少し休憩しますか?」

 副社長はそう言うと、美琴の前に缶コーヒーを置いた。

「え? いつの間に?」

「友野さんが、集中している間に買ってきました」

 副社長は少年の様に笑うと、自分のコーヒーを目の前にかかげた。


「いただきます……」

 美琴は、頬を赤くしながら缶の蓋を押し開けた。


「そういえば、この前聞き損ねた『胸を張って仕事がしたい』って話、聞いても良いですか?」

 しばらくして、副社長が遠慮がちに声を出した。

「はい……えっと……。私、ずっと励まされてたSNSがあって。この会社に入ったのも、そのSNSの影響なんです」
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