干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

はじめてのボランティア

「朔人さん。部長をお探しですか?」

 部長の席の前に立つ朔人の後ろ姿を見かけ、メンテナンス部のスタッフが声をかけた。


 もうとっくに定時は過ぎている時間だ。

 メンテナンス部のスタッフも半数以上が帰っており、人影はまばらだった。


「はい。ちょっと用事があって……」

 朔人はすぐに振り返り、満面の笑みを浮かべて答える。

「あの、部長は定例の会議が伸びていて、もう少ししたら戻ると思うんですが……」

 スタッフは壁の時計に目をやった。


「いえ。大丈夫です! もう、用はすみましたから」

「え? どういう……?」

 スタッフの疑問の声には耳を傾けず、朔人は笑顔のまま手に持っていたスマートフォンを後ろのポケットにしまい部屋を後にした。
< 119 / 435 >

この作品をシェア

pagetop