干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「あの。この刈ったものはどうするんですか?」

 美琴は袋の中に、草をぎゅうぎゅうに詰め込みながら雅也に聞いた。

「うーん。ほとんどが燃えるゴミとして、処理されるんだよね。時には再利用したいって人に、提供したりしてるみたいだけど」

 慣れた手つきで草を刈りながら、雅也はしたたる汗を首元のタオルで拭った。

「ふーん」


 雅也が動くたびに、サファリハットからのぞく前髪がさらさらと揺れる。

 美琴はそのため息が出そうになる横顔を、そっと眺めていた。


 ある程度作業が終わりに近づき、美琴達はあの滝つぼが見える斜面に腰かける。

「この景色を見ながらお茶が飲めるなんて……贅沢すぎます!」

 美琴は両腕を伸ばし深呼吸をして、森の空気と滝つぼに落ちる水の音を全身にしみこませようとする。

「滑落経験者としては、より感慨深いんじゃない?」

 雅也があははと笑い、美琴もつられて大笑いした。
< 122 / 435 >

この作品をシェア

pagetop