干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 もちろん今日だけは、ちょんまげ用の赤いポンポンも、黒縁メガネもロッカーにしまってある。


「馬子にも衣裳だな」

 部長が鼻で笑いながら、チラッと美琴を見る。

「あれ? 俊介、見とれちゃってるんじゃない?」

 東に言われ、副社長がびくっとする様子が美琴の視界に写った。


「いや……雰囲気変わりますね。良いと思いますよ」

「あのさ。おまえは、もちっと気の利いた事言えないの? 『可愛いですね』とか」

「もう! 東さん、やめてくださいよ。私の方が恥ずかしいですから!」

 あははと笑いながら、美琴はデスクに鉢植えを置いた。


「滝山くん。何かラッピングできるもの知らない?」

「あ……そういえば、あっちの棚に……」

 話をしながら作業をする美琴の横顔を、副社長は少し戸惑ったような表情で見つめていた。
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