干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 美琴は顔を上げて、エレベーターの階数を眺めた。

 チカチカと光るランプは、このビルの最上階で止まる。


「こっちですよ」

 副社長が重い扉を開けながら振り向いた。

 後ろについて扉を抜けると、急に強い風にあおられて美琴は一瞬目をぎゅっと閉じる。

 しばらくして、そっと目を開けると飛び込んできたのは、一面光の粒の様な夜景だった。


「わぁ……。すごい……」

「でしょ?」

 副社長は屋上の端までゆっくりと歩き、フェンスに手をかけた。

 美琴もその隣に並んで立つ。


「屋上に出られるなんて、知りませんでした!」

 美琴は目をキラキラさせながら、副社長に笑いかける。

「だって、僕だけの特別な場所ですから」

 副社長は口元に人差し指を当て、いたずらっぽくほほ笑んだ。


「前に東さんが言ってた『いつものとこ』っていうのは、ここのことですか?」

「そうです。一人になりたい時はいつもここに来てました。ここからぼーっと景色を見ている時だけ、本当の自分に戻れる気がして……」

 副社長は柵に両肘をのせて寄りかかり、そっと顔をうずめる。
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