干物のミカタ ～副社長！ 今日から私はあなたの味方です！～

　定例の会議に向かう長い廊下を俊介は眉間に皺を寄せながら歩く。

「どうすんの？　トータルの件。社長に報告するの？」

「いや。まだ状況が把握しきれてないからな……」

　健太は隣で大きなため息をついた。


　あの後、俊介は部長に隠密に調査するように指示をし、部長はすぐにメンテナンス部に戻った。

　俊介の脳裏に不安そうな美琴の顔がよぎる。


「あとさ……」

　健太がいつになく真面目な顔で俊介を覗き込んだ。


「おまえ。美琴ちゃんと何かあっただろ」

「え……」

　俊介は目を丸くして立ち止まり、健太の顔を振り返った。


「健太には、関係ないだろ……」

　しばらくしてさっと目をそらす俊介に、健太は再び大きなため息をついた。


「そりゃ関係ないよ。俊介のプライベートにはね。でも……お前は副社長なんだからな。その立場が逆に美琴ちゃんを傷つける可能性もあるってこと、しっかり覚えとけよ」

　健太は人差し指を俊介の鼻先に突きつけると、先に歩き出す。

「そんなこと……」

　言いかけた俊介は、しばらくその場から動けずにいた。