干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 美琴は、はっとして雅也を見上げた。


 ――ああ、そうか。この人も副社長と一緒なんだ……。重すぎる責任と、自分を取り巻く環境の中で必死にもがいてるんだ。


「水上さんと副社長は似ています……」

 しばらくしてから、美琴は下を向いてぽつんと言った。

「そうかもね。昔から似てる。だから結局離れたのかも知れない……」

 雅也は美琴の顔を覗き込んだ。


「でもね……」

「え?」

「でも、俺と俊介は違うよ。俊介は行動できない……」


 そう言うと雅也は突然美琴の肩を掴み、美琴の身体を壁に押しやった。

 美琴は手を払いのけようとするが、雅也の手にはさらに力がこもる。


「ま、待って……」

 目の前で見上げた雅也の瞳には、悲しく儚げな色が浮かんでいた。
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