干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「全部で五社みたいですね……」

 美琴は自分の心臓を落ち着かせるように、わざと低い声を出してそっと耳打ちする。

 すると会場内が急にざわつきはじめた。


「げっ! トータルかよ」

「しかも副社長自ら参加か……こりゃ無理だな」


 美琴はその声にまたどきっとして、反射的に入り口を振り返った。

「あと一社はあいつか……」

 副社長の低い声が耳に響く。


 雅也は相変わらず人目を惹く華やかさで颯爽と登場し、美琴を見つけるとパッと笑顔を見せた。

「やっぱりすぐに会ったね」

 雅也の言葉に副社長は何も答えず、目線だけ合わせている。


「ど、どうも……」

 美琴がぎこちなく会釈をすると、雅也はそっと美琴の肩に手をかけてから案内されたテーブルについた。


 美琴は隣の人の脇から、そっと雅也の様子を伺う。

 雅也はすぐにそれに気がついたのか、満面の笑みでひらひらと手を振っている。

 美琴は慌てて姿勢を戻しチラッと隣の副社長の顔を見ると、副社長は仏頂面をしながら資料に目を落としていた。
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