干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

敵の足音

「見積りを書きかえた?! 一体どういうことだ!」

 聞いたこともない程の大きな声を出した雅也の姿に、室内は一気に凍り付く。

 雅也が社員を怒鳴りつけるなど、今まで一度もなかったことだ。


「あ、あの。社長からの指示で……」

 怒鳴られた社員は、震えあがりながら小さな声を出した。

「どうして、俺に相談しなかったんだ!」

「ま、雅也さんには言うなって、きつく口止めされて……」

 社員は、涙目になりながら小さく言った。


 ――くそっ。これじゃあ何も変えられない……。


 雅也はデスクに拳を叩きつけた。

「あ、あの……」

「わかった……。大きな声を出して悪かったね」

 雅也は大きく息を吐き、落ち着いた声を出すと片手を上げた。

 それを見た社員は他のスタッフと共に、申し訳なさそうに部屋を後にする。


 足音が遠のくのを確認してから、雅也は受話器を手に取った。

「もしもし。雅也です。少しお時間を頂きたいのですが……」
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