干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「俊介。ちょっと道が混んでるからこっちに車回してもらうわ」

 会社のエントランスを出て、少し歩いた先の歩道で健太は俊介に声をかける。

 目の前の道路が工事中でエントランスに入れないと、さっき運転手から電話が入ったところだ。


 俊介は健太の声には反応せず、車道の方に目を向けたままじっと動かずにいる。

「どしたの?」

 健太は首を傾げながら隣に立ち、俊介の目線の先を追った。


 車道には路上駐車している真っ赤なスポーツカー。

 そして誰かが乗り込もうとしている所だった。


 ――いかにもな派手な車……。って、え?!


 健太は驚いて目を見開き、もう一度よく目を凝らして見つめる。

「え……あれって、美琴ちゃんと雅也……?」

 つい言葉が口を突いて出てしまい、健太は慌てて口元に手をやった。


 目の前で車に乗り込むのは、雅也に肩を抱かれて助手席に乗り込む美琴の姿だった。


 ――おいおい……。これは、やばいだろ……。


 健太は恐る恐る俊介の横顔に目を向ける。


 無表情で成り行きを見つめる俊介の顔からは、何を思ったのかは読み取れなかった。

「行くぞ……」

 俊介はしばらくしてから目線を反らし、一人で歩道を歩き出した。
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