干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 俊介は副社長になってからというもの、めったに感情を表に出すことはなかった。

 周りは敵ばかりだし、どこで上げ足を取られるかわからない。


 ――常に無感情だった俊介が、これだけ変わったんだから、それはすごい事なんだけど……。


 健太はもう一度、俊介をチラッと見る。


「あのさぁ。俺が口出しできることじゃないけど。美琴ちゃんに話聞いてみろよな。何か事情があるのかも知れないじゃない?」

 俊介は何も答えずに、無言のまま車に乗り込む。

「俊介、頼むぞ。今プロジェクトにとって大事な時期なのはわかってるだろ!」

「だからこそだろ……。大事な時期になんでライバル会社の、よりによって雅也と二人で会ってるんだよ……」

 俊介はつぶやくように言うと、膝の上で握り締めた拳にぐっとさらに力を入れていた。


「そりゃそうだけどさぁ。頼むから、今のその感情そのままぶつけないでくれよな。絶対にこじれるぞ」

「わかってる……」

「本当かなぁ」

 健太は眉に皺を寄せながら、また大きなため息をついた。
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