干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「他のみんなは?」

「部長は朝からメンテ部で、滝山くんは資料集めに書庫にこもるってホワイトボードに……」

 美琴はそう答えながら、ふと扉の前に立っている副社長の姿を見つけた。

「あれ? 副社長もそんな所でどうしたんですか……?」

 明らかにいつもと違う東と副社長の様子に、美琴はだんだんと不安を感じ始める。

 副社長は腕を組みながら、入り口の扉に肩を寄りかからせた。


「友野さん。今日はやけに元気ですね」

「はい?」

「昨日は仕事中、心ここに在らずだったのに……」

「え……。どういう意味ですか……?」

 美琴は眉をひそめて、副社長が何を言わんとしているのか伺おうとした。


 ――もしかして! 朔人さんと話してた事が耳に入ったの?!


 はっとして目を泳がす美琴の姿を確認すると、副社長は途端にくるっと背を向けた。


「ちょっと出てきます……」

 副社長は冷たい声でそうつぶやき、扉はばたんと閉じられた。

 美琴はその声に背筋がゾクッとして、泣きそうな顔で慌てて東を振り返る。
あんなに冷たい顔をした副社長を今まで見たことがあっただろうか。

 東は困り果てたように頭をかいていた。
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