干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 副社長の言うように、トータルがラストのシーンでデザインを作ってきた場合、グリーンだけの装飾では明らかに見劣りしてしまう。

 もっと印象的な何かがないものか。


「なぁ、そういえば……」

 しばらく口を閉ざしていた部長が、おもむろに声を出した。

「この前、森山さんのカフェの時に作った、コウモリランの壁掛けって、シカっぽかったよな……」

「……え!」

「た、確かに!」

 美琴は滝山の手書きの紙のブロックの中に、いくつかコウモリランをイメージした絵を描き込んでみる。

 これだったら、森の中でシカが見守っているイメージを表現できる。


 ――それともう一つ。


 美琴はそのまま紙の真ん中に大きな木を描いてみた。

「美琴ちゃん? 何それ?」

「あの、アーシャの母親代わりは大きなブナの木なんです。だからパネルの真ん中にブナの木を置くのもありかも、と思って」

「で、でも壁面装飾だから手前に木を置くのはNGなんじゃない?」

「うーん。そっか……」

 美琴はまた行き詰って眉間に皺を寄せた。


「あ……」

 すると美琴の隣で、副社長が小さく声を上げた。
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