干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 グリーンデザインの副社長室は、目前に迫ったプレゼンに向けて作業も大詰めになっていた。

 こんなに慌ただしいが、活気のある室内は久しぶりだった。


「副社長! デザイン画の最終チェックしてもらえますか?」

 美琴は、印刷したばかりのデザイン画をプリンターから取り出すと、そのまま副社長のデスクに置く。

「プ、プレゼンのパワポ資料もチェックして下さいー」

 滝山も割り込むように、資料を横から滑り込ませた。


「友野さん。オッケーです。このまま進めてください」

 しばらくして、副社長はそう言いながらデザイン画を手渡そうと手を伸ばした。

「ありがとうございます!」

 笑顔で勢いよく伸ばした美琴の手、は思わず副社長の指に触れてしまう。

 ドキッとした美琴は慌てて手を引っ込めようとするが、副社長はその手にコツンと指を当てた。


「がんばって」

 副社長はほほ笑みながら口の動きだけでそう伝えると、滝山の資料を確認するため目線を落とす。

 美琴は真っ赤な顔のまま、デザイン画をぎゅっと胸に当て自分のデスクに戻った。


 朔人に廊下で出会った日、副社長は何事もなかったように食堂に入って来た。

 美琴もあれ以来、朔人の事に関しては特に何も聞いていない。
< 220 / 435 >

この作品をシェア

pagetop