干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「友野と滝山(たきやま)。打ち合わせするから準備して」

 午後になってすぐ、部長の大きな声がフロア内に響いた。

「はーい」

 慌てて立ち上がる美琴に、他のスタッフからの視線が注いだ。

 ――何だろ?

 美琴は不思議に思いながらも、とりあえずメモできるものを持ち、部長の後ろについて歩き出した。


「ねえ。何の打ち合わせか聞いてる?」

 美琴はこそっと、一緒に呼ばれた隣の同期の、滝山壮太(たきやまそうた)に声をかける。

「何も……」

「まさかだけど……副社長のプロジェクトの話じゃないよね?!」

 美琴はさっきの社食での会話を思い出して、ゾッとしながら隣を見た。


「さあ……」

「泥船プロジェクトの噂知ってる?」

「いや……」

 下を向いて曖昧な返事をする同期に、ため息をつきながら、美琴は部長に続いてエレベーターに乗り込んだ。


 上昇するエレベーターの階数を見つめながら、嫌な予感がだんだんと増していく。


 ポンという音と共に、エレベーターが静かに止まり扉が開く。

 その階数を見て、美琴は思わず天井を仰いだ。
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