干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

結果のゆくえ

 どれくらい時間が経っただろう。

 予定の時間を大幅に超過して、やっと会場にイベント会社の担当者他、関係者が姿を現した。

 美琴も緊張した面持ちで椅子に座る。


 しばらくして、今回の責任者という男性が前に立った。

「大変長い時間を頂戴し、申し訳ありません。今回ご提案頂いた二社の内容が甲乙つけがたく、協議は非常に難航しました。私の正直な気持ちはどちらも採用したい……」

 男性は一旦言葉を切り、頭をかきながら前を見た。

「ただ、今回のイベントの目的は映画のPRです。映画の事を全く知らない人に、その世界観を直観的に伝えられるのはどちらか、その一点で決定しました」

 静まり返った会場内の全員が、固唾(かたず)をのんで男性の次の一言を待つ。

 美琴は思わず目を閉じて、祈るように顔の前で両手を組んだ。


「壁面装飾は……グリーンデザインインターナショナルさんに、お願いいたします」


 「わぁ!」と歓声が上がり、美琴達は思わず立ち上がった。

「副社長! やりました……!」

 美琴は目に涙を浮かべながら、副社長の腕にすがりつく。

 後から東と部長、滝山が駆けつけて、みんなが副社長に抱きついた。


 副社長はそんなみんなに何度も頷きながら、そっと美琴の顔を見て、優しく頬に手を触れた。
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