干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 健太は、しゃがみ込んだまま自分の頭を抱える。

 ――俺はおちゃらけるけど、実は冷静に俊介を見守る秘書だったはずなのに……。


 雅也との過去の感情が入り混じって、子供の様に熱くなってしまった事に健太はひどく落ち込んでいた。


 すると、今まで事の成り行きを静かに見守っていた部長が、ゆっくりと後ろから歩いて来て隣に立つ。

「あいつは突っ走るからなぁ……。まぁ、でも大丈夫だろ」

「部長、そんな呑気な……」

「え? でも干物が好きなのは副社長だろ?」

 部長はキョトンとして健太の顔を見る。

「そうですよ。そうだと思うんですけど……。なーんか美琴ちゃんは雅也の事も気にしてるんですよね。理由はわかんないんですけど。だから俊介も二人にさせたくなかった……」

「草刈りの知り合いだったってやつか?」

「うーん。それだけなのかなぁ。はぁ……。雅也が本当の悪人だったらこんな心配いらないんですけど」

「違うの? さっきはあんなに毒づいてたのに? 東くんも本当は好きなんだね。あの雅也って奴のこと」

 部長は少しからかうように笑った。


 健太はじとっと横目で部長の顔を見ると、何も答えずに再びはぁと大きなため息をついた。
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