干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~

泥船プロジェクト

「嫌な予感、的中……」


 エレベーターを降り、たどり着いた先には、“副社長室”の文字がはっきりと書いてあった。

「なんだ? おまえ知ってたのか?」

 ドアの手前でがっくりと肩を落とし、うなだれる美琴を部長が振り返る。


「いや……。ちょっと小耳に挟んだもので……」

「おいおい。もう、噂になってんのか……」

 部長はやれやれと首を振り、深くため息をついている。


「まさか、平々凡々(へいへいぼんぼん)末端社員(まったんしゃいん)の私が、選ばれたわけじゃないですよね?!」

 美琴は恐る恐る、部長を見上げた。

「まぁ、そのまさかだな。二人には今日から副社長のプロジェクトチームに入ってもらう」



「えぇ?! 勘弁してくださいよ! このプロジェクトは泥船だって……」

 美琴がそこまで言った時、ガチャリとおもむろに扉が開いた。


 目の前に立っていたのは、にっこりとほほ笑む背の高い超絶イケメン……。


「ようこそ。泥船へ。友野美琴さん……」


 黒い瞳を鋭く光らせ、副社長は静かに美琴を見つめていた。
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